富久(とみきゅう) 別名「富の久蔵」

幇間の久蔵が、酒の上で旦那をしくじり、弱っていると、友だちに富札をすすめられる。松の百十番という札を買い、神棚の中にしまって、当たるように拝んでから、酒を飲んで寝てしまった。夜中に半鐘の音、芝金杉の手前ときいた久蔵は、すぐに旦那の家にかけつけて、出入りを許された。よいあんばいに火は消え、旦那の家は類焼をまぬがれたので、久蔵はごちそうになって眠るとまた半鐘の音。今度は久蔵の家の近所らしいというので、飛んで帰ったがもう焼けてしまっていた。ある日久蔵が八幡様の前を通りかかると、ちょうど富札を突いていて、松の百十番が千両当たりとなる。久蔵は飛び上がって喜んだが、札を火事で焼いてしまってはだめといわれてしょんぼり帰る。途中町内の頭に会うと「お前のるすに火事だったから、ふとんと釜、それに大神宮さまのお宮も出しといた。うちにあるからとりに来な」という。喜んで行ってみると富札は無事あった。「ああありがたい。これも大神宮さまのおかげ、これでご近所のお払い(お祓い)をいたします」 

解説
円朝が実話を落語化したものと伝えられている。

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