品川心中(しながわしんじゅう) 別名「仕返し」
品川の板頭(筆頭女郎)のおそめ、年をとるにしたがって入用なときにもまとまった金ができなくなった。「いっそのこと死んでしまいたい。死ぬんなら相手を見つけて心中しよう、誰がいいかしら」と探し出したのが神田から通ってくる貸し本屋の金蔵という男。四十両の金がなくなって死ぬんだから一緒に死んでくれと頼まれ、二人で裏の海へ飛び込もうと出たもののこわくなってぶるぶるふるえている。おそめは二階から呼ばれたので「さきに行っておくれ」と金蔵を海へ突き落とし自分も飛び込もうとしたとき後からおさえられた。「金ができたから死ぬにはおよばない」「そう、それじゃやめた」とおそめは帰ってしまった。一方金蔵は海に飛び込んだものの遠浅で腰までしかなかったので海岸に上がって芝の親分のところへ行く。ドンドンと雨戸をたたくと中ではバクチをやっていたので手がまわったと思って大さわぎ。(このへんまでを上として切るときは、ひとり階段の下にすわっている男がいたのでさすがはもとお侍だとほめると「いや、とうに腰がぬけました」でさげる)
金蔵が入っていくと「なんだ金蔵か。心中はどうした」というので訳を話す。「よし、それじゃ俺が仕返しをしてやる」とまず金蔵をおそめのところにやる。金蔵は「いま生き返ったところだ」とおそめに話す。そのあとで親分と民公が行き、民公を金蔵の弟ということにして「実は品川へ夜釣りに行ったら死体がかかった。それが金蔵だった。金蔵はお前の書いた起請を身につけていたんだ。だからお通夜に出てもらいたいと思って…。ところで民公、戒名を見せろ」「あれ、ない」とやっていると、おそめは「いやだよ、金さんはいま来てますよ」「そんなはずはないがまあ会わせろ」と行ってみると金蔵の姿は見えずふとんの中に位牌があった。おそめはたくらみとは知らずすっかりおびえて、だまされて髪を切ってしまった。そこへ金蔵が頭を出す。「まあひどい。わたしを坊主にして。明日から商売ができないじゃないか」「いや、おまえがあんまり客を釣るからビクに(比丘尼)されたんだ」
解説
長いので上下に分けてやる。下は別名「仕返し」という。