質屋庫(しちやぐら)
横町の質屋の蔵に毎夜化け物が出るという近所のうわさ。主人は番頭に見届けるよう命ずるが、番頭が一人ではこわいというので入墨をしてふだんから強そうな熊五郎を呼びにやる。はじめは威勢のよかった熊五郎もお化けと聞いてからいくじがなくなってしまうが、仕方なく二人で見張っているとやがてウシミツ時に蔵の奥でなにかぴかっと光った。二人とも腰を抜かしたが怖いもの見たさでのぞいてみると、棚に載っている掛け軸が音もなくすうっと開く。番頭「あれァ、横町の藤原さんから質に取った天神さまのお掛け軸だよ。」天神「こりゃ番頭、藤原がたへ利上げせよと申し伝えよ。あァまたどうやら流されそうだ」
解説
サゲは菅原道真が九州へ流された故事に引っかけたもの。上方ではヒチヤグラ。原話は安永二年江戸板「近目貫」に載っている「天神」。