芝浜(しばはま) 別名「芝浜の皮財布」「芝浜の財布」「皮財布」「馬入」
裏長屋にいる棒手ふりの魚屋魚勝は酒飲みで商売を怠けてばかりいる。しっかりものの女房になだめすかされて朝芝浜の魚河岸に出かけたが、時刻を間違えて起こされたのでまだ問屋が起きていない。浜で夜明けを待っていると、タバコの火玉の落ちた先から財布を見つけ出す。金がたくさんはいっているので夢中で腹掛のどんぶりにねじ込み、家へ飛んで帰って女房と数えると四十二両あった。これで遊んで暮らせると大喜びで酒を飲んでまた寝てしまう。その翌朝また女房に起こされ、商いに行けといわれた。昨日の四十二両は……というと夢だという。金を拾ったのが夢で、友達を呼んで散布したのはほんものと聞いてすっかり心を入れ替え禁酒を誓って商いに精を出す。そのかいあって三年後には通りへ小さな店を出し、若い衆を二、三人置くようになった。ちょうど三年目の大みそか、勘定をとりに来るところもなく、除夜の鐘をききながら福茶を飲んでいると、女房が話があるという。腹を立てずに最後まできいておくれと前置きして、四十二両の金を出す。三年前の夢がうそときいて魚勝が怒ろうとするのを女房は押しとめ、「三年前にこの金で朝から晩まで酒を飲むというので大家に相談したところ、そんな金を使っては罪になる。お上に届けて夢にしてごまかせと教えられその通りにしたところ、落とし主がわからなくて下がってきた金がこれです。腹が立ったら気のすむようになぐってくれ」という。魚勝は心から礼をいい、きげんなおしに女房が一本つけてくれた酒を飲もうとしてちょっと考え、「よそう。また夢になるといけねえ」
解説
円朝が「酔っぱらい・芝浜・財布」でつくった三題ばなしといわれている。その後はなしに改良が加えられて現在の型になった。