寝床(ねどこ) 別名「寝床義太夫」「寝床浄瑠璃」「素人義太夫」「素人浄瑠璃」
家主が義太夫にこっていて奇妙な声で語ってはみんなを悩ます。今夜もみんなに聞いてもらおうと長屋の者を呼びにやったが、また聞かされるのはたまらないとそれぞれの断りのいいわけをつけて誰もやってこない。店の者も仮病を使って逃げるので家主はカンカンに怒って長屋の者はみんな出て行け、店の者にはひまを出すというさわぎ。番頭があわててもう一度長屋をまわってみんなを集めてきたので家主も機嫌を直しみっちりと語りはじめた。そのうちに静かになったので家主が御簾を持ち上げてみるとみんな寝ている。家主はまたカンカン、ただ一人小僧の定吉が寝ないで「おまえ一人でも聞いてくれたのはうれしい。どこが悲しかった。馬方三吉別れか、先代萩か」「いえ、あすこです」「あすこは私が義太夫語った床じゃないか」「あたくしは……あすこが寝床でございます。」
解説
もとは「寝床浄瑠璃」といって大阪のはなし。品川の円蔵は「どこが悲しいんだ」「あたしの寝床に善兵衛さんがはいって寝ちゃったんです」とサゲていた。八代目文楽、五代目志ん生、六代目円生がそれぞれ持ち味を生かしていたが、原話は「醒睡笑」(寛永五年板、安楽庵策伝作)をはじめ安永四年板「和漢咄会」の「日侍」など多くの江戸小ばなしに見られる。