子別れ(こわかれ) 別名「こわめしの女郎買」「子は鎹」「おこわ」「女の子別れ」「子宝」「逢戻り」
【上】大工の熊五郎、吉原の近くでとむらいがあり、したたか酔って帰る途中で屑屋の長公と会い二人で吉原へくり込む。店の若い衆に葬式のときに出たこわめしの折りをやる。しかし背中へ入れてあったために汁が全部ふんどしに染みこんでしまっている。ふんどしの汁をしぼってやろうかなどといっているうちに女が来る。
【中】とむらいの日から四日目に熊五郎が家に帰る。女房はコツコツと仕事をしている。そこで熊五郎はあやまったが女房にピシャとたたかれて腹が立ち、女郎とののろけ話を全部してしまい大げんかになる。仲人が仲裁に入ったがうまくいかず、結局女房は子供の亀吉を連れ家を出てしまう。熊五郎は女郎を連れ込んで一緒に暮らしたが、うまくいかずに女郎とも別れる。
【下】女と別れた熊五郎はまじめに働き世間の信用も出てくる。ある日木場へ行く途中で子供の亀吉と会う。亀吉の話では別れた女房は独り手で子供を育てているという。熊五郎はああ自分が悪かったと反省し、子供に金をやって、ウナギを食わせてやるから明日また会おうと約束する。亀吉は家に帰りお金をどこで手に入れたかと母親に詰問され玄翁でぶたれそうになったので、とうとう父に会ったのを白状してしまう。あくる日亀吉が父と会いウナギを食べていると、母親は店の前を行ったり来たり。亀吉が「おっかさんが来たよ」というので二人は再会し三年ぶりにもとのさやにおさまる。「こうやってもとのようになれるのもこの子があればこそ、子供は夫婦の鎹ですねえ」「やあ、あたいが鎹だって、道理できのう玄翁で頭をぶつといった」
解説
【上】は別名「こわめしの女郎買」または「おこわ」、【下】は「子は鎹」という。柳派では初代柳枝の作ということになっており、三遊派では円朝が、女房が子供を残して出て行くように改作したので別名「女の子別れ」という。これはサゲを重視して母親がげんのうでぶつのはおかしいというので変えたといわれる。大阪では「女の子別れ」のほうが二代目円馬を通じて伝わっている。