愛宕山(あたごやま)
江戸っ子の幇間一八は、旦那のお供で芸者や幇間の繁八と一緒に京都の愛宕山へ山遊びに出かけた。山が苦手な一八は口では強気なことをいっているものの、なんとかごまかして帰るつもり。しかし旦那は一八の腹のうちを十分承知しており、繁八を目付け役にしているので逃げることもならず繁八のしり押しでやっと登った。茶店で土器を買って的に投げていた旦那は、今度は小判を投げてみせるという。もったいないと止めるのもきかず三十枚の小判を投げてしまった。旦那に小判はひろった人のものだといわれた一八は、茶店で借りた傘を使ってなんとか谷へ飛び降りようとしたが、おじけづいて飛べない。そこを旦那にそそのかされた繁八が後からどんとついたので一八は谷底へ。どうやら無事におりた一八は夢中で小判をひろい集めたが「どうして上がる」といわれてはたと困った。仕方なく絹物の羽織、着物、帯をさいて長い縄をつくり、竹のしなりを利用して飛び上がって「旦那、ただいまっ」「お、えらいな。一八、生涯ひいきにしてやるぞ」「ありがとうございます」「小判は…」「あ、忘れて来た」
解説
上方ばなしで、三代目三遊亭円馬が東京へ移した。愛宕山は、京都市右京区上嵯峨の北部にある山で、山頂に愛宕神社がある。土器を谷に向かって投げる遊び所。